Lisaが日本に紹介された1983年春のこと

AppleがApple II,Apple IIIを遥かに超えた性能を持つ「Super Apple」を開発中との噂は,西和彦氏によって月刊ASCIIで伝えられていました。MOS TechnologyのMOS6502を脱却して,ミニコン以上の性能を有するという噂のMotorola MC68000 32bit CPUを採用する予定という情報に心がさわぎました。当時の日本はZ80 8bit CPUを搭載したPC8001/8801,MZ-80B,FM8が人気でした。(高価だったので学生だった自分には手が届きませんでした)大学の情報処理センターのミニコンは16bitのOKITACでメモリは32K WORDという時代でした。そこに32bitの世界が見え始めたのですから,「青少年は興奮する」わけです。MC68000の処理能力は1MIPSを下回る程度でしたが,ミニコンのDEC VAX11/780が1MIPSの処理能力といわれており,空調設備が必要な巨大なミニコンの処理能力を,個人のデスクトップで独り占めできる時代がやって来ようとしていました。

なかなか姿を現さないSuper Appleは,1983年1月19日にクパチーノで開催された株主総会で発表され,世界中の注目を浴びることになりました。日本に詳細な情報が紹介されたのは月刊ASCII 1983年4月号のこちらの記事となります。

XEROX ALTOの流れを組むワークステーションはいくつか紹介されていましたが,1万ドルとはいえ個人でも手が届くスーパー・パーソナルコンピュータがついに登場したことに興奮したことを,今でも鮮明に覚えています。

1983年3月で大学を卒業し,日本モトローラで半導体製造の仕事につくことになりました。64ピンセラミックDIP(デュアルインラインパッケージ)のMC68000(CMOSバージョンの試作品だったと思われます)が製造テストラインに登場したのは1983年秋のことでした。

当時のMC68000の広告には「Break away from the past」の一文が誇らしげに描かれていました。「過去からの決別」により,新しい時代が訪れようとしていました。